放課後等デイサービスが潰れる原因とは。業界の現状と今後の動向を解説【放課後デイブログ⑳】

《放課後等デイサービスの潰れる原因》について解説します!!

放課後等デイサービスの潰れる原因

放課後等デイサービスとは、障がいのある就学児童(小学生・中学生・高校生)が学校の授業終了後や長期休暇中に通うことのできる施設で、2012年の児童福祉法改正により設置されました。

障がいのある子供たちの放課後の居場所を作ることで、仕事をしている家庭のサポートに寄与することから障がい児の学童と言われることもあります。生活力向上のための様々なプログラムが行われており、トランポリン、楽器の演奏、パソコン教室、社会科見学、造形など習い事に近い活動を行っている施設もあれば、専門的な療育を受けることができる施設もあり、厚労省のデータによると2021年時点では全国に15,000箇所以上あると言われています。

そんな多くの方にご利用いただいている「放課後等デイサービス」ですが、近年運営が困難になり潰れてしまう事象も発生しています。潰れていく事業所の多くが「一般的な放課後等デイサービス」であり、「重心向け放課後等デイサービス」は順調に実績を伸ばしている印象です。

今回は、なぜ潰れてしまうのか?今後どうなってしまうのか?という疑問をわかりやすく解説していきます。

目次

1.放課後等デイサービスって潰れることがあるの?
2.放課後デイサービスの現状
3.今後の動向
4.まとめ
5.これから放課後等デイサービスの開所を検討する方に

 

1.放課後等デイサービスって潰れることがあるの?

「放課後等デイサービス」は2012年の法改正を機に、多くの民間企業がこの事業に参入したことで一般的な放課後等デイサービスの施設数が一挙に増え、私たちの生活にも身近な存在になっていきました。参入する企業が増えた経緯は、この事業自体が新しい事業だったこともあり、競合となる事業者も少なく、施設をオープンすればすぐに利用者が集まり儲かる見込みがあった、という理由があるためです。

ですが、儲かる事業ということもあり営利目的に走り、テレビを見せるだけで専門的なケアをしない事業所や不正請求をする事業所といったように、ずさんな運営をする事業所が増えてしまいました。「事業所を増やすだけでなくサービスの質を向上させなければならない」という考えから、2018年度に報酬改定が行われることとなりました。

この報酬改定は、利用者に対してサービスの質を担保することを目的に行われたのですが、これによって人件費の削減や活動内容の変更を求められる企業が増えただけでなく、次々と赤字経営に陥り、経営が立ち行かなくなり潰れる事業所が急増する結果となります。

放課後等デイサービスを長期的に安定した経営目指していくためには、利用契約を増やすだけでなく、余裕をもった人員配置を心掛け、質の高いサービスを提供することが必要でしたが、考慮せずに運営していた事業者が一気に閉所に追い込まれる形となってしまいました。

そんな中でも健全に運営していた事業所はあったのですが、そういった事業者側としては、少しでも障がい児の居場所を確保し、安心して生活し、自立できる場所を確保しようという気持ちで事業を行っていたにも関わらず、それとは裏腹に、収支上の問題で事業を継続したくても続けられないという「経営問題」に発展してしまっていたのです。

2.放課後デイサービスの現状

このような経緯から、一般的な放課後等デイサービスではただ施設をオープンするだけでは利用者は集まらず、利用者のニーズをしっかりと把握し、それに応えられる質の高いサービスを提供できる事業所だけが生き残れる時代になっていきました。

放課後等デイサービスの収入は、90%が国から支払われ、残りの10%が上限ありの利用者負担から得られます。利用回数が増えれば国からの給付金は増えます。しかしほかの事業所とサービス面などで差別化ができていなければ利用者は流れ、稼働率を上げることも難しくなります。そうなると、通常の活動の中だけでは単価はなかなか上がりません。

その結果、契約数を増やすことばかりを考え、上辺だけを整えて保護者や学校との連携が取れなくなっていたり、施設内の怪我やトラブルが増加したりなど、サービスの質が落ちて利用者は集まらないという悪循環に陥ってしまうのです。

その他に人材不足も大きな課題になっています。介護業界全体で言えることではあるのですが「放課後等デイサービス」の場合は、児童との関係性や責任の重さ、という理由から離職される方が特に多いのです。

仕事の大変さはもちろん労働条件も見合わないといった問題もあるため、給料を上げたり、人手を厚くして休みを作りやすい状況を作るといった対策もあるのですが、潰れる事業所以上に新しい事業所が増えているため、そもそも職員を確保出来ずに継続できないという事象もあるほどです。

また、報酬の加算を増やそうと思っても、看護師や理学療法士など専門性の高い職員の確保や、設備・備品などの整備、プログラムの構築などの投資が必要になるなど、事業継続への問題は非常に多い状況にあります。

「放課後等デイサービス」は福祉事業であり、ボランティアではありません。事業を営んでいく上ではビジネス的な視点は大切で、事業を黒字化させて稼働率を高く維持していくための方策を考えるなど、経営者としての手腕が試されるようになっており、一昔前のような、競合が少ないからやれば儲かるだろう、という事業ではなくなってきているということが言えます。

そんな状況の中、2021年度には再度法改正が行われました。この改正では、塾などの機能や預かり中心の事業所があることを問題視する部分があったり、「放課後等デイサービス」に障がい児の学童保育的な役割を担わせることなど、悪い事業所は排除され、より質の高いサービスを求められるようになりました。また、区分に関する概念が大幅に変更されることから、重要事項説明書や契約書の再締結が必要になるなど、新たな対応に追われてしまい、ますます経営が厳しくなる事業者が増えていくことが懸念されました。

3.今後の動向

現状は更なる悪循環を生んでおり、最近では利益にこだわるあまり、利用者や職員を水増しして不正請求をするといったことが横行しており、問題視されています。こういった事業所は、指定取り消しや営業停止などの行政処分を受けることになるのですが、このような事業所の多くは不正を行う運営体制や目先の利益だけを追う経営方針が原因です。

 

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2022年6月6日